【風俗店と税金】「名義人」と「実質的な経営者」どちらに課税!?

ざっくり言うと…
▼店長自身の名義で風俗店の受付事務所を賃借し、風営法所定の届出書を提出。また税務署へ開廃業届に関する届出書及び確定申告書を提出しているのだから、風俗店の収益は店長に帰属する。税務調査の結果下された処分は店長が負うと税務署側は主張。
▼店舗事務所の賃借人及び風営法の届出人だが、風俗業界では「名義人」と「納税者」が異なる例はよくあり、自分は「単なる店長」で「実際の経営者は別の人物」と主張。
▼本件各年分の風俗店に係る収益及び本件各課税期間の風俗店に係る資産の譲渡等に係る対価をそれぞれ享受する者は「実質的な経営者である」別の人物であり「名義人」である店長ではない。税務調査の結果下された処分は違法である。

 風俗業界において、例えばデリヘル事務所の賃貸人となり「無店舗型性風俗特殊営業」の届出をし「名義人」となってはいるものの、「実質的な経営者」は別に存在するというのはよくある話です。もしそのデリヘル店に税務調査が入った場合、どうなってしまうのでしょうか?お店に係る収益は届出の名義人が受取っている判断されてしまい、処分が下されてしまうのでしょうか?

 実際、国税不服審判所において風俗店の経営に係る所得の帰属について争われたケースがあります。請求人はデリヘルの店長。税務調査の結果、店長は風俗店の営業に当たり、自身の名義で風俗店の受付事務所を賃借し、風営法所定の届出書を提出し、当該風俗店の開廃業に関する届出書及び確定申告書を税務署に提出しているのだから、当該風俗店の収益は店長に帰属するとされ、消費税および地方消費税の各決定処分・無申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分を受けてしまいました。しかし「自分は店舗の経営者ではない」と主張し税務署の処分には「風俗店の経営に係る所得の帰属を誤った違法がある」として全部の取り消しを求めたのです。

争点

当該風俗店の経営に係る所得が請求人(店長)に帰属するか否か

主張

原処分庁(税務署) 請求人(店長)
 請求人(店長)は、本件J店(風俗店)の営業に当たって、請求人自身の名義で同店の受付事務所を賃借し、かつ、風営法所定の届出書をe県公安委員会に提出しているほか、同店の開廃業届に関する届出書及び確定申告書を原処分庁に提出していることを総合して判断すると、本件J店に係る収益の帰属先は請求人であることが事実上推定される。
 これに対して、請求人は、上記事実と実体上の帰属先が異なること、すなわち、本件J店の収益がK(実質的な経営者)に帰属することについて、上記推定を覆すに足りる事情を何ら主張立証していない。
 したがって、請求人が本件J店の実質所得者であるとしてされた原処分は適法である。
請求人は、本件風俗店の単なる店長であり、実際の経営者はKである。
 このことは、平成22年○月に本件風俗店の風営法違反被疑事件に係る警察の捜査に際し、Kが逮捕され、請求人は一従業員であるとして逮捕されていないことによっても明らかである。
 また、請求人は、本件店の受付事務所の賃借人及び風営法の届出人であるが、風俗業界ではこれらの名義人と納税者が異なる例が多数ある。
 このように、本件J店の実質所得者は、経営者であるKであり、本件J店の店長である請求人が実質所得者であるとしてされた原処分は事実誤認に基づく違法な処分である。

判断

 実質的な経営者である「K」は「風営法違反被疑事件」の被疑者として逮捕され、名義人である店長を含め数名の店舗関係者が被疑者として警察の取り調べを受けていました。それら警察での供述内容が審査で取り上げられ、判断に大きな影響を与えたようです。その際の供述から以下のことが明らかになりました。

Kは、本件J店の毎月の売上金及び客数の報告を店長から受け、更に、本件J店に係る毎月の利益相当額を店長から手渡しで受領して、店長を含む従業員の給与を当該利益相当額の受領後に支払っていた

② 本件J店の請求人の前任の店長であるTが退職した際、Kの了承により請求人が後任の店長に就任し、更に、請求人が退職した際の本件J店の後任の店長には、Kからの指示により、Nが就任している

③ ファッションヘルスに係る客へのサービスの用に供するためのマンションの賃貸借契約の締結及び解約は、Kの判断で行っており、その際、当該マンションの賃貸借契約及び当該マンションに係る水道光熱費の契約名義人については、Kの指示により、店長又は従業員の名義で行い、経費の支払のための銀行口座も店長又は従業員名義で開設していた

Kの指示により、本件各店舗の当時の店長名義で風営法上の届出をし、また、警察の捜査を受ける前の平成20年分の本件各店舗に係る事業所得についての確定申告をしていた

⑤ Kは、警察が捜査していることが分かった後、本件J店の業態を派遣型デリバリーヘルスに変更し、不要となった賃借マンションに係る賃貸借契約を解約させている

⑥ Kは、本件各店舗が風営法上違法な営業を行っていることから、自分の名前が表に出ないようにするために、風営法上の届出名義、本件各店舗における事業の用に供するために賃借したマンション等の賃借名義、光熱費の支払名義及び経費の支払のための銀行口座の名義等をいずれも本件各店舗の店長又は従業員名義としていたことの各事実が認められた。

⑦ K自身、本件各店舗を平成22年○月までの間経営していた旨、及び本件調査の際、調査担当職員に対して平成18年3月から平成21年1月までは請求人が本件J店を経営していた旨の申述をした理由は、請求人と分けて課税される方が税金が安くなると考えたからである旨の答述をしている。

結論

 本件各年分の本件J店に係る収益及び本件各課税期間の本件J店に係る資産の譲渡等に係る対価をそれぞれ享受する者は、請求人ではなくKであって、本件各年分の本件J店に係る所得及び本件各課税期間の本件J店に係る資産の譲渡等に係る対価がいずれも請求人に帰属するとしてされた原処分は違法であるから、原処分はいずれもその全部を取り消すべきである。

所得税法第12条(実質所得者課税の原則)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

消費税法第13条(資産の譲渡等又は特定仕入れを行つた者の実質判定)
法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。

(平成24年8月21日裁決) | 公表裁決事例等の紹介(国税不服審判所)(http://www.kfs.go.jp/service/JP/88/03/index.html)を編集して作成

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