貸室を無断でコンパニオンの性病検査で使用!?悪質な約定違反で賃貸借契約の無催告解除に!

ざっくり言うと…
▼福岡県のとあるビルにテナントとして入居していた「Y」。Yが関連会社Aに借りていた部屋を使用させ、その一部を風俗嬢に対する性病検査のためのスペースとして使用した。その期間2年余り、延べ1,000人以上が出入りしていた。
▼ビルオーナーはこれが使用目的違反にあたるとして、賃貸借契約を解除し、貸室の明け渡しを求めた。
▼多数の風俗嬢の性病検査に部屋を使用させることは一般人に強い警戒感や忌避の感情を喚起するから、その使用目的違反の程度は重大かつ悪質であると判断された。

要旨

 建物(テナントビル)のオーナーXが、テナントであるYに対して、貸室の一部を風俗営業を営む関連会社、もしくは顧客に性病検査等のために使用させたのは用法違反だとし、賃貸借契約解除を主張。貸室の明渡しと賃料相当損害金の支払を求めた事件。

結論

 一審では請求を認容。Yが控訴したが棄却。

裁判所の判断

1.性病検査で使用していた事実

 A社は風俗嬢の性病検査のために必要な血液や検体を採取する場所として、平成1411月から平成17年1月まで毎月1回程度、本件貸室内の打ち合わせ用の個室を使用。1回につき4050名の風俗嬢から血液や検体を採取していた。

2.風俗店との密接な関係について

 性病検査についてA社はホームページの作成を依頼された取引先であるB社から同社の従業員である風俗嬢の血液を採取する場所を提供するよう依頼。やむなく本件貸室の一部を無償で使用させたと主張している。

 B社は「D団体」なる企業集団に属する会社であり、横浜・東京・札幌・福岡において風俗店の経営を展開。これらの店舗内ではヘルスコンパニオンによる男性客に対するきわどい性的サービスが行われている。「D団体」は衛生面の取組みとしてJ社と提携して風俗嬢に対する月1回以上の検診を行うことをホームページで公開している。

 「D団体」に関するホームページへの書き込みによれば、D団体の会社名はA社、社長がHで、もと札幌支社の所在地がKホテルであったなどとされておりA社については事実と合致している点があり同社とD団体との密接な関連を窺わせるものがある。

 強く疑われはするものの、その書き込みの正確性が担保されているわけではないので、これを認めるまでには至らない。

3.極めて悪質で重大な約定違反

 上記認定事実によればYの関連会社であり本件貸室を実際に使用しているA社は、いわゆるテナントビルの一室である本件貸室の一部を「D団体」の店舗の開店当初から、上記のように多数の風俗嬢の性病検査のために必要な血液や検体を採取する場所として定期的に使用させていた。

 仮にYの主張するとおりA社の取引先であるB社からの依頼によりやむなく使用させたものであったとしても、それが不動産業、広告請負業及びそれらに通常関連ないし付帯する業務のための事務所以外の目的に使用してはならないとの約定に違反することは明らかである。

 そして身近な場所で多数の風俗嬢の性病検査のために必要な血液や検体が採取されるなどということは、一般人をして強い警戒心や忌避の感情を喚起せしめないではおかない性質の行為であるから、上記のような約定のもとに本件貸室を賃貸していたXにとってはまことに遺憾なことであって、その約定違反の程度は極めて重大かつ悪質なものといわざるを得ない。

 またA社の違反行為はYの違反行為と同視することができるから、Xの本件無催告解除は特段の事情のない限りは有効であると解され本件賃貸借契約は終了したことになるものというべきである。

コメント

 裁判の中でA社側は「日常的、常習的に使用」していたわけではなく、「打ち合わせ用の個室を月に1回の割合で1回につき2ないし3時間程度使用させたに過ぎない」と主張。また「本件ビルの他のテナントから、Xに対する苦情やクレームはなかった」と抗弁しています。しかし裁判官からは下記の通り手厳しい指摘がなされています。

本件ビルはテナントビルであるが、風俗業関係のテナントが入っている形跡はないのであって、(中略)、定期的に性病検査を必要とするような業務に従事している風俗嬢が、本件ビルに2年3か月にわたり、延べ1000人以上も出入りして、性病検査を受けていたことになるのであり、このような事実が発覚すれば、一般には強い警戒心と嫌悪感を持たれ、本件ビルのオーナーとしてのXの見識や企業体質が問われ、企業イメージが重大な打撃を受けるであろうことは見易いところである。

 「性病検査」の目的で使用していたことで大きな問題になりましたが、何が用法違反に当たるのかは契約内容によって様々です。使用する目的を偽っていた場合はもちろん、営業形態を無断で変更した場合、契約解除が認められることがあります。性風俗店の場合はより一層厳しい対応を迫られるでしょう。

 風俗業者が物件を直接借りる場合は、もちろん使用目的・用途を物件オーナーに届けないとトラブルになります。そして、関連会社であっても風俗業ではない会社が借りている物件に「多数の女性を出入りさせたり」「性病検査の場所」として使うと、その借りている会社も物件からの退去を求められる、という裁判所の判断になります。

 余談ですが風俗店の不動産トラブルとしてよくあるのは、事務所や待機所は不動産所有者の「承諾書」を警察に届出なければなりませんが、警察へ届出をした住所とは異なる場所で営業しているケースです。駅近くの立地条件の良い場所を借りようとするも「承諾書」をもらえず、やむなく別の目的で借り無断で事務所と使用するというパターンです。とくに待機所を無断で借りている場合が多く、トラブルになっています。寮として使用する場合は警察に届出をする必要はありませんが、不動産所有者に無断で借りているとトラブルになることがあります。どのような目的であれ性風俗営業に関連する目的で使用する場合は事前に承諾をもらっておくべきです。

 最近ではエリアによっては性風俗向けに物件を貸し出すことを控えるようにもなってきていますが、この裁判のような風俗絡みの悪質な賃貸借契約のトラブルの発覚で不動産所有者の心証をさらに悪くし、今後ますます物件が借りにくくなってしまうかもしれません。世間の性風俗にたいする厳しい視線を理解しつつ、違法行為が常態化しないよう心掛けたいものです。

平成18()806 平成1921日  福岡高等裁判所

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