コンパニオンと関係をもった男性スタッフに罰金!しかし損害賠償を予定する契約は労働基準法16条に違反し無効に!?

ざっくり言うと…
▼男性従業員が女性キャストの一人とメールアドレスを交換。また同じ経営者が経営する別店舗の女性キャスト2名と肉体関係を持った。
▼男性従業員は女性キャストとの交際を禁じる誓約書に自著した上で指印し提出していた。誓約書に違反したことを受け店舗は損害賠償を求め、退職させると支払いができなくなるため、勤務を継続させて損害賠償の支払いをさせていた。
▼誓約書違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償の請求には理由がないとされた。原告が損害賠償として受け取った既払金が法律上の理由がないこととなり、被告の原告に対する不当利得返還請求が認められた。

 要旨

風俗店を経営する原告Xが、同店舗のホールスタッフとして勤務していた被告Yに対し、同人物が女性キャストとの私的交際をしない旨の約束に違反したと主張。債務不履行に基づく損害賠償を請求したのに対し(本訴)、YはXに対し、未払い賃金等の支払いを求めた(反訴)。

関係図

 結論

損害賠償請求事件については棄却。
未払い賃金等請求事件については一部認容、一部棄却。

 裁判所の判断

【事案の概要】
 被告は、労働契約を締結するに当たり、原告に対し誓約書を提出している。
 そこでは男性従業員が女性キャストと交際することにより、当該交際を理由に女性キャストによる顧客に対するサービスの質が低下、女性キャストが退職、顧客が当該交際に気付いて来店を控えることを懸念し、男性従業員に対し、誓約書の中で「私的交際を一切しない」ことを約束させていた。

 原告は当該事項に違反した被告(男性従業員)に対し、当該交際により損害が生じていることを前提として損害賠償の支払いを求めているが、被告が退職すると損害賠償の支払いができなくなるため、引き続き勤務を継続させて損害賠償の支払をさせていた。

 被告は「D店」で勤務していた当時、同店の女性キャスト一人とメールアドレスを交換した。また被告は「E店」で勤務していた当時、同店の女性キャスト3名と飲みに行き、女性キャスト2名と肉体関係をもった。

 本件反訴として被告は原告に対し、労働契約に基づき時間外労働及び深夜労働に対する未払い賃金の支払いを求めた。また私的交際に対する損害賠償として既に支払った金額について法律上の原因無く支払ったものとして返還を求めた。

 【誓約書の有効性及び誓約書違反に係る原告の損害について】
 本件誓約書はその内容及び作成経緯に照らし、労働契約の不履行又は労働契約に伴う行為に対して一定額の損害賠償を支払うことを求めたものと認められる。
→労基法16条に違反し無効である。

 被告が女性キャストと肉体関係を持ったことは認められるが、それによって原告の企業秩序等に影響を与えたかは明らかでない。原告は退職した女性キャスト3名に対しても、男性従業員との交際を理由として退職したかどうかの確認をしていない。また原告自身が退職理由を推測であると認めている。
 交際を理由として女性キャストが退職したことや、当該退職によって売上が減少して原告に損害が生じたと認めることはできない。
→誓約書違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償の請求は理由がない。

 【原告に対する不当利得返還請求について】
 被告は誓約書に違反したことを理由としてお金を支払っていたところ、損害賠償額の支払を予定する誓約書が無効である。賠償責任が存在しない以上、原告に本件既払金を受領する法律上の原因がない。
→被告の原告に対する不当利得返還請求は認められる。

 【未払い賃金の有無について】
(実労働時間について)被告は原告の店舗に出勤し、原告や店長の明示又は黙示の指示の下、店舗の営業のために必要な行為として掃除をおこなったり、ミーティングに出席していたのであるから、その時間帯については原告の指揮命令下におかれて労務を提供していたと評価することができる。少なくともミーティングの10分間および営業の準備に20分従事していたとして営業開始時刻の30分前から労働時間とみとめられるべき。

(賃金の減額について)原告は誓約書違反の行為があったことから被告の同意を得て降格し時給を減額したと主張するが、損害賠償金400万円(女性キャスト一人あたり80万円)もの支払が求められたやりとりをふまえると、被告の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足る合理的な理由が存在するといえない。
→被告が賃金減額に同意していたと認めることはできない。

 コメント

 控訴審においてもこの一審判決が支持され、原告(風俗店経営者)の控訴が棄却されました。私的交際をしない、違反した場合には損害賠償に応じるとした誓約書を提出していながら、複数の女性キャストの交際しそのうち2名とは肉体関係をもっていた男性従業員。しかしその誓約書は労働基準法16条に違反するとして無効であると判断されました。

 第16 
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

 原告(経営者)は控訴審においては、「労働条件とは全く無関係な領域における労働者に不法行為について損害賠償を定めたものであり、労働者の労働条件に関する損害賠償額の予定ではない」と主張しましたが、そこでも「店舗で職務に当たるにつき遵守すべき事項とそれに違反した場合の措置等を定めるものであることに照らし、本件合意は、本件労働契約に付随するものであると認められる」と判断されました。損害賠償を認めさせるにしても、経営者側としては女性キャストの退職と男性従業員との交際の間の因果関係を客観的な証拠に基づいて明らかにしなければならいという、非常にハードルが高いものになっています。

 一方で労働時間や賃金の減額について被告側の訴えが一部認められました。裁判の中では風俗店側の適当な労務管理の実態が指摘されています。風俗店の経営者になろうと思われている方は労働基準法などの重要な法律には必ず目を通して理解しておくことをおすすめします。

 <第一審>東京地方裁判所 平成28年(ワ)第36557号/平成29年(ワ)第5264
<控訴審>東京高等裁判所 平成30年(ネ)第1535

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