警察の立入調査で発覚!営業廃止届義務違反の可否

ざっくり言うと…
▼店舗型性風俗店を同じビル内で「A」と「B」の2店舗を営業していたが、条例改正に伴い、店舗型性風俗店の新規開業は全地域で禁止になった。しかし、条例改正前から営業している「A」「B」両店舗については、既得権により営業継続を許されていた。
▼その後、店舗名を「X」、「Y」に変更し、公安委員会に届出はしたものの、出入口や受付カウンターを1つに統合し、実質的に1つの店舗として営業されていた。
▼警察の立入検査があり、2店舗の営業形態は実質的1店舗であり、「A」・「B」開業の際の既得権は喪失したと説明し、経営者はその場で「今後は営業しない」という営業廃止の意志を示す。「A」と「B」の既得権喪失を認めるが、営業廃止届出義務を果たしていないとされた。

 要旨

営業廃止届義務違反罪。

既得権で営業を続けていた店舗の営業形態が届出を提出した際の内容と異なるため、既得権の喪失後の営業廃止届を提出する義務を怠ったとして営業廃止届義務違反罪に問われた。

 結論

破棄自判・無罪。

 裁判所の判断

本件被告会社(Z社)は、本件「A」と「B」2店舗の営業は、「X」と「Y」に店名を変更後、「X」の看板のみを掲げるなど同一性を失った結果、既得権を喪失し、無届営業又は条例による禁止された地域における違法な営業であり、その時点で営業廃止届の提出をすべきではあった。

 しかし、公安委員会に営業廃止届を提出しても、その内容の確認には時間がかかり、Z社の代表は、警察の立入検査などにより既得権喪失の事実を知り、今後営業を行わない旨を表明していた。既得権喪失のために営業を止めざるを得ない場合には、営業者として、あえて「営業を廃止する」ことを示す必要なはく、廃止届出書の提出の必要はないと判断された。

 Z社の代表は、営業の同一性を失わせるつもりはなかったが、警察の指摘により事後として営業の同一性が失われていたことに初めて気づいたと判断できる。そのため、既得権の喪失も自認していたわけでなかったため、さかのぼって届出された廃止届は、廃止する意思があったと評価するには実態からかけ離れているということもあり、これが廃止届を提出する必要がないと判断された理由である。

 また、営業の同一性が認められないことから、変更前の営業と、変更後の営業は同一のものではないという判断も重なり、営業廃止届出義務違反罪は成立しないとされる。

 コメント

 原審は営業廃止届出義務違反罪を訴えていたが、裁判所は既得権の喪失を認めつつも、床面積や個室数の増加によって従来の営業との同一性が失われ、既得権も喪失した時点で廃止の届出の義務の対象となる店舗の営業は「終了」していると判断し、営業廃止届出義務違反罪を成立を否定しました。

 原審が指摘している「店舗」と、警察が立入検査を行った「店舗」は別物であるというのが裁判所側の見解であることがこの判決の一番の肝。しかし、既得権を喪失していることを認識していたのであれば、「既得権喪失後の無届営業罪」の成立などの可能性はあったと判決を振り返っていました。
 同じビルで2店舗経営をしていたものの、部屋数を増やすためや、人件費の削減などを考えた結果、2店舗で届出を提出したものの結果として1店舗として営業していた……という店舗型性風俗店の判例です。新に店舗を構えることができなくなってしまった以上、現行の形で経営していくことしかできません。現状を打破するために新しい取り組みをしようと、自分だけの判断で推し進めてしまうと法を犯すリスクは高まってしまいます。迷ったときはすぐに専門家に相談するようにしましょう。
平成30年4月26日 札幌高等裁判所/判決 平成29年(う)第148

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