お仕事の度に一枚の紙にまとめた「接客メモ」がコンパニオンを救う!?

ざっくり言うと…
▼デリヘルコンパニオン(40代・女性)が交通事故で頸部痛の後遺障害に(後遺障害等級14級9号)。
▼デリヘルコンパニオンの接客行為は肉体労働と裁判所は認めた。後遺障害はデリヘルの仕事に相当程度影響すると認められ、損賠賠償請求が一部認められた。
▼コンパニオンが提出した、いわゆる「接客メモ」の信用性について正確であると認められる。「接客行為の回数や収益の減少の状況は概ね反映されているものと認めるのが相当」と判断された。

要旨

デリバリーヘルスでコンパニオンをしていた40代の女性が交通事故(左折のため減速して走行中のコンパニオン車両に後方から被告車両が追突)により頸部痛(後遺障害等級14級9号)の後遺障害を残した。現に行っていた接客行為には公序良俗に反し違法行為が含まれるが、適法な内容の接客行為を前提としても同行為は肉体労働と評価でき、後遺障害は稼働に相当程度影響することから逸失利益および休業損害が算定された事案。

結論

損害賠償請求について一部認容。

裁判所の判断

 原告(コンパニオン)は本件事故当時3、4名の事業者のもとで接客従業者として登録。これらの事業者に対し、あらかじめ月曜日を休日として届け出ており、月曜日以外の日には、午後6時ころに事務所に勤務する旨の連絡をして自宅待機していた。客の依頼を受けた事業者から連絡を受けると、自ら自動車を運転して指定された場所へ行き接客。代金やチップを受領しその後一部を事業者に支払っていた。

 事故前の1年間には約545万円の収益(客から受領した代金やチップの額から事業者に対する支払い分や接客メモに記載された諸費用を控除した額)を得ていたが、本件時発生後の1年間の収益は約270万円であった。
 事故前は週6日稼働していたが事故後は週4日しか稼働できなくなる。

 原告(コンパニオン)は1回の接客行為ごとに当該接客行為に関する事項を記載した1枚のメモ(以下「接客メモ」という。)作成。接客行為の前に客が指定した場所や接客時間、代金額を記入し、接客行為の後に客の特徴などを記入していた。

 接客メモの信用性について、その記載内容が詳細であり、体裁に不自然な点がないことに照らして、同メモは原告の接客に関する事項がほぼ正確に記載されているものと認めるのが相当である。
 接客行為の際に性行為に及んだことを窺わせる記載のある接客メモも書証として提出していることに照らすと、本件事故後の一部の接客メモを隠匿するなどの人為的な操作は加えられていないものと認められるから、本件事故後の原告の接客行為の回数や収益の減少の状況は概ね反映されているものと認めるのが相当である。

 原告(コンパニオン)の収益には対価の支払いを伴う接客行為の際に性行為に及ぶという公序良俗に反して違法な行為による部分が含まれていることや、原告が現に取得した収益に基づく適切な所得申告を行っていないこと等に事情に照らすと、原告の収益減少自体が法の保護に値する休業損害であるということはできないし、適法に稼働して所得申告を行っている者の平均収入をもって休業損害の算定を基礎とすることもできない。
 そこで、賃金センサス女性学歴計40~44歳平均収入額である381万5,100円の70%に相当する267万570円を基礎年収額とするのが相当である。

 原告(コンパニオン)が現に行っていた接客行為には、公序良俗に反して違法な行為が含まれているが、適法な内容の接客行為を前提としてもその接客行為は肉体労働とも評価しうるものであり、原告の後遺障害は稼働に相当程度影響すると考えられる。
 結果5年間、5%の労働能力を喪失したと認められた。

 治療費、通院交通費、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料については原告(コンパニオン)の主張通り認められた。     

コメント

 交通事故に遭ったデリヘルのコンパニオンが損害賠償を請求した事案。確定申告をおこなっていなかったため基礎収入に関する立証が出来ず、また当該コンパニオンは接客時に違法行為である性行為を行っていたこともあり、休業損害を認めるべきかどうかが争われました。またコンパニオンの収入を唯一証明する「接客メモ」の内容の信頼性についても争われました。

「接客メモ」の信用性について、接客した顧客の特徴を記入しているだけでなく「性行為」をしていたことや「直引き」をおこなっていたことなど、コンパニオンにとって知られたくない内容まで、事故後隠匿することなくそのまま提出していたことが、接客に関する事項がほぼ正確に記載されていると認められました。

 接客した顧客に関するメモを残しているコンパニオンは少ないのかかもしれませんが、このケースでは「接客メモ」の信用性が認められたことで、事故後の接客行為の回数や収益の減少についての重要な証拠となり損害賠償請求が認められることとなったわけです。「接客メモ」には顧客の特徴などを記入していたということですから、一部人気のコンパニオンがつけている「お客様ノート」に近いものと考えられます。今回の事例を踏まえると「接客メモ」や「お客様ノート」のようなものは、可能な限り毎回つけておくべきでしょう。

 また確定申告を行っていれば金額が変わっていた可能性もあります。今回、逸失利益および休業損害の算出に使用された「賃金センサス」の平均賃金は、例えば専業主婦などの家事従事者や学生・幼児など収入がない場合に利用されます。当該コンパニオンの場合「賃金センサス」の平均賃金である381万5,100円計算されたわけですが、実際彼女の当時の収入はそれ以上あったようですので、確定申告をしていなかったことでかなり低く見積もられたことになります。

 風俗で働いていることを秘密にしている方も多いと思います。裁判となると家族やパートナーの理解が必要になりますので簡単なことではありませんが、事故に遭った場合、例え性風俗で働いていても自らの収入を証明することができれば、損害賠償の請求が認められることがあります。その備えをしておくことは決して無駄にはなりません。まずは接客メモを残しておきましょう。

平成23年(ワ)第4207号 名古屋地方裁判所 平成24年9月10日

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