スカウトと共謀した店舗スタッフが職業安定法違反(有害業務への募集)で逮捕!?(後編)

デリヘル「S」で店長を務めていた島原譲氏(仮名・30代男性)は女性を勧誘し性風俗店で働かせたとして職業安定法違反(有害業務への募集)の疑いで逮捕された事件。女性の求人活動では何に気を付けなければいけないのか。具体的に説明します。

ざっくり言うと
▼「性交類似行為」は有害業務。性風俗店へ女性を勧誘することは職業安定法違反。
▼性風俗店のスタッフが職業安定法違反で逮捕されるのはかなり珍しいケース。
▼法令に違反してしまう環境が身近に。なにが事件化するきっかけになるか日頃から整理を。

どんな行為が違法となるのか?

 性風俗店やキャバクラに女性を斡旋していたスカウトグループが摘発されたというニュースは時折テレビのニュースなどでも目にすることがあります。そのためか公共の場所で声をかけたりする行為や、女性を性風俗店へ紹介することが違法だという認識は高まっているのではないでしょうか。

 一方で店側の具体的にどのような行為が違法にあたるのか、明確な線引きができずに困っている関係者も多いのではないしょうか。中には何が違法な行為にあたるか気にもせずに業務当たっている方もいるかもしれません。今回の事例のような性風俗店のスタッフが職業安定法違反(有害業務への募集)で逮捕されるというのはかなり珍しいケースです。しかし過去に事例がないわけではなく、2012年に埼玉の性風俗店が同じ容疑で逮捕されています。また過去にはどのような行為が募集(勧誘)にあたるのかという判例も出ています。

 まず前提として理解しておかなければいけないのは性風俗店で顧客に対して行われている「性交類似行為」が有害業務に当たるということです。そしてその有害業務をサービスとして行っている性風俗店へ女性を勧誘することは職業安定法違反(有害業務への勧誘)になります。

 路上で女性に声をかけて、性風俗で働くよう勧誘する行為の違法性は明らかです。しかし面接に来た女性対しては何が問題となるのでしょう。
 判例においては性風俗店の広告をみて応募して来た女性に対し、仕事の内容や条件を説明することは違法にはならないとされています。働くことを決めた女性に対して「一生懸命やったら稼げるから頑張って」等と声をかけることも違法ではありません。

関係図

 しかし採否を保留した女性に、後日連絡をとるような行為は募集(勧誘)なるとされています。また働くことをまだ決めていない段階で「すぐに慣れるよ。借金も返せるよ」などと入店するよう働きかける行為についても違法だとされています。今回の島原氏のケースはまさにこの点が問題にされました。面接にやってきた女性に対する「綺麗ですね」「素敵ですね」という発言が勧誘行為にあたるとされたのです。にわかには信じられないとても厳しい判断ですが、つまりは女性が働くという意思表示をするまでは、店で働くよう誘う発言は控えなければならないということです。

 店とスカウトの関係については、そもそも東京都などではスカウトから紹介された女性を面接し採用すると、「ぼったくり防止条例」違反になります。「ぼったくり防止条例」とは東京都では「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」の通称です。その中では不法に勧誘された者を性風俗店で働かせることを禁じています。しかし同様の条例は必ずしも全国にあるわけではありません。だからといって安心ということではなく、その場合は島原氏のように職業安定法違反ということで取り締まりの対象となるでしょう。

 このような事例をみていくと性風俗店のすぐ身近なところに違法行為があることがわかります。例えば、判例では面接の際には働くかどうかの決断を保留した女性に後日連絡をとる行為は違法だとされていますが、店を辞めた女性に再度働いてもらうために連絡をとる行為はどうなのか。スカウトが女性に声をかけ誘い性風俗店へ紹介することが違法なら、性風俗店のコンパニオンが友達の女性を誘い店に紹介する行為も違法なのか。現在、性風俗店舗があたりまえのように行っている求人募集のスカウトメールは…。

 島原氏は逮捕された際に警察から「スカウトメールは本来違法」だと指摘されたと言います。「スカウトメール」が今後できなくなることも考えておかなければいけないでしょう。これまで当たり前のように行ってきた業務について、違法性はないのか立ち止まって見直す必要があるかもしれません。

最後に

 余談ですが島原氏は今回逮捕された際に、警察からスカウトグループが摘発された背景として、国連などの場で日本の性風俗においてスカウトが「人身売買」を行っているとの批判がされていることが影響しているという話を聞かされたそうです。2020年には東京オリンピックも控えていることを考えると、今以上に日本の性風俗文化が海外から注目されることも予想されます。そうなると場合によっては非常に厳しい取り締まりが行われるかもしれません。

 今回の摘発をきっかけに、デリヘル「S」では姉妹店を含めて今後一切スカウトから女性の紹介を受けることを禁止しました。スカウトを切ったことで一部の女性との業務委託契約も解除することになりました。女性の在籍数・出勤数の増減は大きく店の売上に影響しますが、同じ法令違反を繰り返し、反省の態度が見られないと判断されれば、最悪「営業停止」なることもあります。デリヘル「S」では今後の女性求人方法について違法行為に頼らない新しいアプローチを模索しています。

 性風俗業界には法令を違反してしまう環境がすぐ近くにあるということを理解しておきましょう。そしてどんなことがきっかけになり事件化してしまうのか日ごろから整理しておきたいところです。

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